「フラミンゴの羽根の中」サンプル
<一部抜粋>













 雪が降り積もる中、泣きながら歩き続けた。




 歩いて、



 歩いて、


 考えて、



 決断した。





 コラさんが命がけで解放しようとしてくれたけど、俺は・・・ドフラミンゴのもとに戻った。




 宝箱を出て一人歩き出したローは、呆気なく見付かり連れ戻された。しかしそんなローに対しドフラミンゴは何事も無かったかのように
一味に迎え入れた。

「満足したか?」
「・・・ああ。」
「悪魔の実は受け取ったんだな?」
「・・・ああ。」

 たったそれだけだった。

 拷問されるか、下手をすれば殺されてもおかしくないと思っていただけに、少し拍子抜けした。ドフラミンゴは出て行く前と変わらずローに
右腕として全ての知識や力を与えてくれる。

 コラさんの事は大好きだったけど、やっぱり俺はこの世界が、政府が・・・大嫌いだ。

 何より、もうコラさんはいない。


「俺は“D”の裏切り者なのかな・・・」


 それでも子供心に決心は揺らがなかった。


■■■■■

 コラさんが死んでからちょうど十年が経った。

 オペオペの実のおかげで珀鉛病は完治し、もう命のタイムリミットは無い。



 二十歳になっても、ローの世界に対する敵意は変わる事はなかった。



 ファミリーの一員として育ったローは船医としての地位に就いた。ドフラミンゴがドレスローザを掌握してからは国王専属の医師となった。
 あれからドフラミンゴがローに命を差し出せと言ったり、命令されたら命を捧げる事を躊躇わないような教育はされた覚えがなかった。

 勿論自身にそんな殊勝な服従心はない。主従と言うより“利害の一致したパートナー”とローは勝手に思っている。

(俺は二度、大切な者をこの世界に壊された。)

 世界も海軍も信用できない。

 ヴェルゴの潜入にも気付かず、自分たちの密偵だったコラさんをみすみす死なせた海軍に、何の期待も信用もない。

 この十年でローはドフラミンゴの右腕に相応しいと、ファミリー皆が納得するほどの実力を備えていた。何よりドフラミンゴが常に側に
置くほどだ。

「ロー、来い。」

 その言葉は最高の優越感と自信をくれる。

「ああ。」

 短く返事をし、一歩後ろを歩く。

(ドフラミンゴのように強く・・・)

(ドフラミンゴより強く・・・)

(こんな世界はドフラミンゴにめちゃくちゃにされればいい・・・)

 ドフラミンゴに対する恐怖心は無いと言えば嘘になる。ただ最近は彼の舐めるような視線を感じる事がある。

 子供の頃からドフラミンゴは、ロー達を膝に乗せて打ち合わせをしたり、コミュニケーションをしていた。流石に成長するにつれ遠慮したが、
ドフラミンゴは面白がってか未だに強要してくる。

「ロー。」
「・・・何だよ・・・」
「フッフッフッ、ココへ来い。」

 ポンポンと膝を叩き乗れと指示される。

「もう子供じゃ無いんだが・・・」
「俺がココに来いと言ってるんだ。」

 静かに強要してくる。しばらくの沈黙の後、大きく溜息をつきローはドフラミンゴに歩み寄った。

「ベビー5や取り巻きの女達でいいだろ・・・」
「なんだ、ヤキモチか?」
「は?」

 ニヤニヤと嫌みっぽく笑う様子にムッとしながらもローはドフラミンゴの膝の上に座った。

「ああ、成長したな。」
「当たり前だろう。」
「幾つになった?」
「・・・二十歳」
「あれから十年か・・・」
「・・・ああ。」

 突然グッと腰を掴まれ引き寄せられた。

「ドフラミンゴ・・・?」
「ああ、待った甲斐があった・・・」

 覗き込んだドフラミンゴのサングラス越しの眼が獣のように鋭く光る。

「この俺が、わざわざ待ってやったんだ。」
「は・・離せ・・・」



「しっかりと躰で覚えろよ?」



■■■■■



「や・・ぃやだ・・・」

 床に引き裂かれた服の残骸が散らばっている。ドフラミンゴの膝の上で、ローは腕を頭上で纏められていた。見えてはいないが彼の能力
である“糸”で拘束されているのだろう。

「もう大人だろう?」
「こんな・・・こんなのは違う・・・」
「俺が全て教えてやるって言っただろう?」
「だって・・・俺は男だ・・・」
「ああ。知っている。」








<つづく>
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