君が好き。




君が好き。




たとえ俺を見つめてくれなくても。

君が好き。






俺はもうすぐ遠くへ旅立つ。








   「灰の花」



BY 槻也











くぅくぅと気持ちよさそうに寝息をたて彼がそこに寝ている。



「岩城、そんなところで寝ていると風邪引くぞ。」

軽く揺り動かしてみる。
鉄生は熟睡していて反応は返ってこない。

今日の診察はハードだったらしくかなり疲れている。
医局の自分の机で眠ってしまっていた。







こんなに近くに居るのに。

好き

その一言が伝えられない。


好き。

言葉を飲み込む。








ゆっくりと唇に触れ、輪郭をなぞる。

相変わらず寝ている鉄生に呟くように話しかける。
「なぁ、岩城。俺来週からイラクに派遣されるんだ。」



髪に触れ自分の指を絡める。



「俺がこのまま帰って来れなかったら、お前は悲しんでくれるかな・・・」



「お前の心に残るかな・・・・」





そっと自分の唇を鉄生のそれに重ねる。




一旦離し、もう一度キスする。





涙が溢れる。




もし叶うのならもう一度此処に、彼の居る此処に帰りたい。


君が好き。


君が好き。





”岩城鉄生”を愛している。







END



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